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溜息(仮)その3         小説を作るチャレンジ

 フィビィは少し怪訝な顔で 先を急ぐベンジャミンを見た

 

この人はいつもそうだ 優しく思いやりはあるが

 

その方法がコロコロと変わる 

 

付き合わされる方はそのことを承知していないと

 

軽薄な人物だと勘違いしてしまう

 

もしかしたら 彼は わざと そうしているのかもしれないが

 

 

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 やたらと 背の高い 痩せっぽちは すぐに見つかった

 

一生懸命に 恍惚の表情で 演説をぶっているようだ

 

隣で とても嬉しそうな表情の美しい女性が 演説に頷いている

 

「私たちは間違いを犯そうとしていないかね?」

 

ベンジャミンには 昆虫を操る魔法使いが 

 

生贄の乙女を食らおうとしているようには見えなかった 

 

「彼が本当に魔法を使っているのなら別の話だが」

 

フィビィは 軽口には気が付かないふりをして 

 

40間近の兵卒に指令を与えた

 

「フォレスティアさん オーラを連れ出していただけませんこと?

 

 私でしたら 足が10本の虫の話でも 紫色のハチの話でも

 

 なんだって 躱してやることができますわ!」

 

 なんと 司令官自らが囮となって 囚われの乙女を救おうというのだ

 

兵卒は 司令官の献身と勇敢さに 敬意を表しつつも具申した

 

「彼より うんと年上の 

 

少しばかり世間を知った男に その役を譲ってくれないかね

 

彼は 私が苦手らしいが この際 都合がいい」

 

 どうだろうか?事の成り行きを想像してみる

 

フィビィはありったけの頭脳を働かせてみた

 

自分は華奢だ ローガンの前に立って オーラを隠すことはできない

 

しかし ベンジャミンなら話は別だ 軍隊での経験 スポーツ 狩り 

 

肩の幅が広くなることばかりしてきたのだろうから 

 

上からの視線でも オーラをすっかり見えなくすることもできるのだ

 

「お願いしてよろしいかしら フォレスティアさん」

 

「拝命仕った!!」

 

 

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 「やぁ お二人さん!!先ほどは失礼した!

 

 私一人では このような場にいるだけで 震えあがってしまうのでな!

 

 彼女には 付き添いをお願いしていたんだ!」

 

震えあがった様子など 一つも見せずに ベンジャミンは弁解した

 

 先ほどまでの演説がまるで幻だったかのように ローガンは沈黙する

 

そして 痩せこけた頬が引きつったのを その場の全員が確認した 

 

隣にいたオーラは突然のことに動揺はしたが 

 

落ち着いた姿勢は崩さなかった

 

 「とても重大なことを思い出したのだよ!」

 

 ベンジャミンは オーラ ローガンを交互にみて話し出す

 

「私は少しばかり 顔が広い 噂話もたいがいこの耳に入ってくる

 

 どの家の どの息子が 誰に恋い焦がれているか

 

 あのマダムが実は どこそこの青年に想いを寄せているか もだ

 

 だが しかし そんな私が知らないことがある」

 

 ローガンの怯えた瞳を 逃さないように 

 

ベンジャミンは顔をそちらに向けた

 

 「ローガン・メルローズ 

 

 君の想い人は どのような 人だろう

 

 君が昆虫の研究をしていることは知っているが

 

 どのような女性に夢中になるのか それを知らないのだ!」

 

 このような質問を ローガンは避け続けていた

 

ましてや 女性たちの前でなど

 

きっと メデューサに睨まれた古代の戦士たちのように

 

動けなくなってしまうだろう その隙に生贄の乙女も逃げ出せるはず

 

 しかし 予想外のことが起きた 顔を紅潮させた痩せっぽちは

 

意を決したように 語りだしたのだ!

 

「僕は 昆虫の研究をしていますが 

 

 女性に関心がないわけではありません!

 

 僕とて 男です!!

 

 ある 美しい方のことを想わない夜はないのです!!」

 

 ローガンのこのような 取り乱した様子を 皆初めてみた

 

話にも聞いたことがない 

 

 フィビィは驚きのあまり 今何をすべきか忘れそうになったが

 

霞を払い 意識を集中して オーラの方に身を寄せ その手をとった

 

そして 準備は整ったとばかりに 満面の笑顔を作り 

 

この場から 退散することを宣言した

 

「あら 私たち女がいては お邪魔でしょう

 

 殿方同士で お話を楽しまれたらいかがかしら」

 

 気でも狂ったのか 話を聞いていないのか 

 

ローガンは二人の未亡人を引き留める

 

 「き 聞いてくださって 結構です

 

いや 聞いていただきたい! 

 

僕が愛してやまない人は ただ 美しいだけではない

 

友に献身を尽くす心のきれいな人

 

どのような場でさえも明るくしてしまう生命力に溢れた人

 

その人の身振り 手振り 

 

コロコロと変わる その表情に 僕は打ちのめされているのです 

 

しかし 口下手な僕は その人の前では ろくに話もできないでいたのです」

 

 ただならぬ気配に ベンジャミンはローガンの腕を掴んだ

 

そうしないと この男が今にも飛び掛かってしまうと恐れたからだ

 

「そ そうか ローガン・メルローズ 良く分かった!

 

 少しばかり 喉を潤してから 話さないかね?

 

 落ち着くんだ 私なら 相談に乗れるはずだ

 

 なんなら 口下手を直す方法も伝授できるかもしれないぞ!」

 

 ベンジャミン・フォレスティアは

 

自身に似つかわしくもない早口で言い放ち 

 

細長い腕をつかんで体の向きを強引に変える

 

 フィビィは その機を逃さずに ごきげんよう とだけ言って

 

オーラを連れてその場から離れた

 

心臓の音がやけに大きく鳴っている

 

何か良からぬことが起きそうな 運命の歯車が動き出したような

 

不安ともつかない感情がうごめいている

 

「気付いたのでしょう?」

 

オーラは 悲劇の主人公のような面持ちの親友に問いかけた

 

「何を気付くというの?」

 

フィビィはぶっきらぼうに問い直す

 

いつもは おしゃべりなくせに 怖くなると黙ってしまう

 

昔から この子はそうだった

 

親友の子供みたいな態度を見て オーラは大きな溜息をひとつ

 

そして フィビィが恐れていたことを口にした

 

 「彼が夢中なのは あ・な・た・よ!」

 

フィビィは あの痩せっぽちのことを

 

意識してしまいそうになる自分に 恐怖を感じていた

 

 

 

                   終わり

 

 

 

 想定と違う結末になってしまいました・・・

 

できるだけ ストレートな言い回しを避けるように作りました

 

比喩表現を頑張ってはみたのですが う~ん

 

同じ主人公で 思いついた話もあって

 

まとまったら 他にもやろうかなと思います

 

作った本人は結構楽しかったwww